【技術書記録004】「無敗営業 チーム戦略 オンラインとリアル ハイブリッドで勝つ」の要点メモ

今回の技術書

www.amazon.co.jp

技術はプログラミングだけの話ではない。
セールステックに取り組む弊社にとっては、これも技術書の1つだ!と言い切る。
営業系の本を読むと、よく「営業は科学」というフレーズをみかける。これは営業にとどまる話ではない。
「科学」とは「再現性」を見つけ出すこと。どの業務においても「再現性」を見つけて「仕組み化する」ことが重要。
それが属人性を低くし、誰もが効率よく楽に働くことができるようになると思うから。

ということで、まとめていきましょう。



第1章 強い営業チームに欠かせない4つのキーワード

ずばり、この本の結論は最初に紹介される以下4つ。

①勝ちパターンを作る
②活動の実態を「見える化」する
③人が育つ仕組みを作る
④コミュニケーションのバランスを整える

作者は上の4つが「オセロの4つ角」であり、1から順に押さえていく必要があると説く。
まず、①「勝ち筋に関する共通認識」がないと戦えない
 → ②活動の実態がみえないとマネージャー・メンバーともに疑念が生じる
 → ③人が育つ仕組みがないと、選ばれたメンバーしか生き残れない
 → ④達成へのプレッシャーに偏る、対話・議論の時間の優先度が下がる(コミュニケーションのバランスが崩れる)
という状態に陥るから。
この4つ角が揃うと、お客さまと営業の間、マネージャーとメンバーの間で共創関係が生まれる
そして、本書の内容を組織の「共通言語」として活用すること。共通言語が組織を動かしている状態とは、以下の3つを満たす状態。

・ある言語について、複数のメンバーが同じ認識・理解で使っている
・その言葉が様々な場面で、メンバーの行動にプラスの影響を与えている
・その言葉の活用が、個人の習慣や組織の文化というレベルになっている


プログラム・コードにも共通する話。メンバー間で名前や用語を共有し、同じ認識の元にプラグラミングしていく重要性は、これまで読んだ本の中にもあった。言語を超えて、理念や価値観も共有できるようになると、強い組織になるんだろうな。それは営業でも同じか、それ以上に重要であるということか。



第2章 オンライン商談は「段取り」と「納得感」で決まる

4つのキーワード①勝ちパターンを作る〜その1〜

コロナ禍で加速度的に増えたオンライン商談。従来の人柄や勢いに任せた営業は通じにくくなっている。重要なのは「段取り」「納得感」の醸成。

段取り
オンライン環境の整備及びそれを前提とした商談環境の確認、議題と時間配分の検討(詰め込みすぎない、説明よりも疑問解消)、資料やサンプル事前共有、事前コミュニケーション。

納得感
説明一辺倒の、一方向的な資料説明ではなく、説明→質問→回答深堀り→説明→質問…といった双方向のやり取りで進める。当日の資料説明は最小限にとどめ、お客さまの疑問解消に時間を割く。提案の20%はお客さまとともに作る「つっこまれビリティ」。オンラインを活かしてリアルタイムに共同編集・共有。
・複数人での商談の場合は、当日以外の準備・課題意識の見える化・商談後の特定人物のフォローが重要。


アンケート結果をみるに、営業の人柄の重要度が相対的に下がっている。ということは、営業をもっとロジカルにできるチャンスと捉えられる。
非営業の私からすれば、事前に準備を仕込めるオンラインの方がやりやすそうと思ったり。
何を準備すればよいか、事前に課題とタスクを洗い出せれば、当日は疑問の解消に時間を費やせる。段取り力と聴く力が求められそう。



第3章 ハイブリット営業の勝ちパターンは「二人三脚」

4つのキーワード①勝ちパターンを作る〜その2〜

・オンライン商談の
メリット :移動時間やコストの削減、画面共有ができる、スキルを磨きやすい
デメリット:ITリテラシーが求められる、感情面への訴求・関係構築が難しい

⇨メリット・デメリットをふまえてアプローチを使い分ける「ハイブリット営業」が主流になる。場面に合わせた手段の最適活用。商談機会獲得のために、電話やメールでお客さまとの接点を増やす。

・ハイブリット営業の肝は、お客さま(特に担当者)との「二人三脚」。従来のプロセスを小さく分解し、お客さま接点の量と質を向上させ、「二人三脚」で提案を練り上げていく。
・メール・電話の内容を見直し、これらもアポ・商談と捉える。メールで多様なコンテンツを発信し、お客さまとの接点を増やす。メールは「相手の役に立つ情報を送る」のが基本スタンス。


メールは特に「何を書くべきか」を議論して形にしやすいので、取り組みやすいと思う。
コロナ禍でよく「元に戻る(戻りたい)」というワードが出るけど、これまで非効率だった部分を元に戻す必要はない。考え方の枠組みを転換していく必要がある。
営業の実態を詳しく知らないので何とも言えないけど、オンラインありきで物事を進めていった方が、効率的だし柔軟性にも富むと思う。
感情面の訴求にしても、雰囲気で押し切るより、コツコツと積み上げていく方が長い信頼の獲得につながりそう。



第4章 活動プロセスの実態は「フェーズ」と「行動の量・質」で見る

4つのキーワード②活動の実態を「見える化」する〜その1〜

・営業の活動はブラックボックス化しやすい。なぜ? どうすればよい?

  1. 結果を重視 = 隠し玉案件が生まれやすい
    → 「見積もり提示」以前の案件の状況を見る
  2. 行動目標を重視 = 手段(コールや訪問件数)が目的化
    → 行動の「質」も見る
  3. 報告の詳細性を重視 = 重要度の高い接戦案件が埋もれる
    → 停滞や異常を発見しつつ、優先度の高い行動の実行状況を見る

1について、どの段階から案件か?を明確にすること。
2について、その行動から結果につながっているか、質を計る指標を明確にすること。
3について、停滞や異常=フェーズ(後述)が進んでいない案件、優先度の高い行動=組織として優先度を上げた活動をモニタリングする。

・営業のプロセス、特に提案中の段階を「フェーズ定義」することで見える化する。
→ 見積もり提示以前の案件が見える、チームの共通言語・理解が生まれる、行動の量や質が見える、着地見込みが見える、どこでつまづいているか見える、道筋が見える
・各フェーズは「お客さまとの間で何が合意できたか・何が進んだか」で定義する。

・行動の「量」と「質」をKPIでウォッチする。営業の形態、個々人の課題(ABCDマネジメント)に合わせてKPIを設定する。
・受注・失注の要因をカテゴリー分けすることで、「減らしたい失注」を減らし、「増やしたい受注」を増やす。焦点を当てるプロセスを定め、量か質どちらかに関する重点方針を出し、カテゴリーを見ながら改善のサイクルを回す。


ここまで徹底するのは大変だろうな…。
でも行動基準を曖昧なまま活動しても、安定した業績は出せない。
組織として、常に目標と状態を観測しながら、改善サイクルを回す必要がある。
それを支援するのが、次章で紹介されるSFA。業務で特に関わる領域だ。



第5章 「仕組み」を使ってプロセスマネジメントを推進する

4つのキーワード②活動の実態を「見える化」する〜その2〜

SFA(Sales Force Automation:営業支援システム):営業のプロセスや進捗状況を管理・支援することで、営業活動を仕組み化できるツール

SFAの5つの機能
①顧客情報マネジメント
②案件や商談の進捗マネジメント
③営業担当の行動マネジメント
④社内の情報共有やコミュニケーション促進
⑤売上(見込み)や予実をタイムリーに出力

SFAを活用していくためには?
・データの入力が目的化しないよう、活用状況をウォッチしながら、必要最低限の項目に絞られた状態にする。
・マネージャーは日常のマネジメント行為と紐づけてダッシュボードを設計する。
→ ATM:Alert(停滞や異常を発見、案件介入)、Targeting(優先順位の高い行動を推進)、Monitoring(業績や進捗を分析、次の手を打つ)
SFA導入・活用の「目的」を明確に伝え、データ入力の意義・データの具体的な活用方法を明らかにする。
・グラフの縦軸に業績、横軸にSFAの活用度合いをプロットすると、正の相関が成り立つ(ラグビーボール、下の画像)状態を目指す。
f:id:itiiki:20211027111752j:plain


グラフはAngularのNgxChartsで作ってみた。ソースは下記。

stackblitz.com

システム開発側として特に重要な章。重要事項が多すぎてまとめきれないが、ユーザーの要望・使い勝手に関わる内容が多く盛り込まれている。
ユーザーの要望を正確に、かつ真摯に実現できるよう業務に取り組んでいきたい。
使ってて楽で楽しく成長実感できるようなシステムを目指したいですね。



第6章 人が育つ仕組みを作るセールス・イネーブルメント

4つのキーワード③人が育つ仕組みを作る

・組織として売上を上げていくには、営業活動の進め方の「型」が必要。
・「型」は「その組織で、誰もが当たり前のようにできていること」。この土台があることで、成長の方向性がはっきりする。
・「型」をもとに人が育つ仕組みを「セールス・イネーブルメント」と呼ぶ。
・セールス・イネーブルメントにおける理想は、「型」を構築・運用することで、上述の「ラグビーボール(正の相関)」ができること。

型を機能させるための「グー・チョキ・パー」
・グー:具体的なサンプル。ロープレの動画や提案資料。
・チョキ:グーに対するチェックポイント。成果を上げるために押さえるべきポイント、行動の共通点。
・パー:グー・チョキを踏まえた上での、パフォーマンスの確認。ロープレで実践。
→ プロセスマネジメントとセールス・イネーブルメントを組み合わせてPDCAを回し、「型」を磨き上げていく。


弊社はこのセールス・イネーブルメント事業に取り組み、SEA(Sales Enablement Automation)を開発する。
従来のプロセス管理から発展して、人が育つ仕組みをシステムに落とし込んでいくイメージか。
どこまで実現できるだろう。その先へどれだけ進んでいけるだろう。楽しみだ。



第7章 PM理論でコミュニケーションのバランスを整える

4つのキーワード④コミュニケーションのバランスを整える

PM理論
・Performance(目標達成能力)、Maintenance(集団維持能力)。PMがともに高い状態を理想とする。
・Pは目標設定や計画立案、目標達成のための指示など、直接的に業績に関与する施策。
・Mは面談やトレーニング、対話など、人間関係・集団の維持まとまりを良好にするための間接的な施策。

リモートワークの広がりを受け、Mの部分が大きく失われ、Pに偏っている傾向にある。

PMのバランスを整えるには?
・オセロの4つ角のうち、これまでの3つを押さえること。押さえることで、Pに対する不安を小さくできる。
・結果、Mを手厚くする時間を確保できる。
・業績関与具合から分類した4つのポイントでバランスを整える。

①商談単位のフォロー(P):行き詰まっている接戦案件を中心に。案件相談の際はSFAのURLを添付。
②チームミーティング(Pm):「数字(業績、着地見込み、KPI)とアクション(現在地、重点アクション、方針・戦略)」の確認、「武器の供給(決着案件振り返り、ケーススタディ、ロープレ)」を5:5で。商談の単位のフォローはミーティングの外で。SFAダッシュボードは事前に各自がチェック。
③トレーニング(pM):ロープレ、勉強会。勉強会は6W1Hで考える(Why, Whom, What, Who, When, Where, How)。
④対話の場(M):1on1、オフサイト。リモートが増えてきたため、案件相談と分けて時間が必要。オフサイトで「何のために仕事するか」「何を価値観として大切にするか」等について、立ち返ることが必要。


リモートであろうとなかろうと、コミュニケーションの部分は重要な話。特に、「何のために」「何を目指すのか」がはっきりしていないと、仕事は味気ないものになる。
仕事する理由は様々で、第一義には生きるためだけど、せっかく仕事するのであれば、面白く楽しみながらやりたい。それには自分が納得できる目的が必要だ。
「自分のやりたいこと」と「自分の仕事」を一致させることができれば、本心から生き生きと仕事できる。その極致を目指したい。



第8章 これから営業チームはどうなるか

営業組織の状態を表す4つのステージ
1. 探る:戦略を立てて試行錯誤 → 勝ちパターンを発見、「回す」へ
2. 回す:指示統制で実行 → 「見える化」で一気に回す
3. 手放す:「回す」が硬直化したら、権限移譲でメンバーが思考 → 人が育つ仕組みを整える
4. 仕込む:率先垂範でチャレンジ、さらなる高みを目指す → コミュニケーションのバランスを整えていれば、安心してチャレンジできる。行き詰まると「探る」へ戻る

4ステージ1サイクルで回し続ける。1巡目より2巡目、2巡目より3巡目の次元を高くしていく。

営業組織のモデル
・営業1.0:社内外に「ズレ」が生じている世界。関係者それぞれが別のものを見ている状態。
・営業2.0:「二人三脚」の世界。関係者が同じものを見ている状態。
・営業3.0:「共創」の世界。関係者が共に作り出した新しいものを一緒に見ている状態。お互いの垣根・立場関係が良い意味で取り払われた状態。

隠れたニーズの発見 → 共創 → 予期せぬ成功へつなげる。「最前線にいる営業がどんな情報を社内にフィードバックするか」が会社変革の鍵になる。



結局まとめるのに2周読んだ。営業の目指す方向性を少し理解できた気がする。
SDGsじゃないけど、営業の仕事を仕組み化・システム化することで「誰ひとり取り残さない営業手法の確立」ができるだろうか。
それに少しでも貢献していきたいと思う。誰もが効率よく楽に働ける社会を目指して。